the time of parting (12.サヨナラは言わないでおくよ)
卒業式を目前に控え、校庭を吹き抜ける風に春の訪れを感じ始めたあの日―――・・・
事の知らせはあまりに突然で、ボクは耳を疑った
手塚が留学?
当然の如く共に高等部へ進み、これからも一緒だと思っていただけに急にはそれを理解出来なかった
―――・・・彼の口から聞くまでは
放課後、テニスコートへと向かった
引退して半年―――・・・夕日でオレンジ色に染まったコートが酷く懐かしい
後輩部員たちのボールを打つ音を聞きながら、ボクはある場所へと足を進めた
―――ほら、居た・・・
ボクは知っている
部員たちから見えないこの場所で、手塚はいつも練習風景を見ている
―――・・・何かやり残したことでもあるかのように・・・
「手塚・・・」
「不二か」
「聞いたよ、留学の事・・・」
「驚かせてしまって、本当にすまないと思っている」
「・・・うん」
きっと、ずっと前から決めていた事だったのだろう
夕日差す横顔が、決意の固さを物語っている
だけど・・・
「ねぇ、手塚」
「なんだ」
「何度も悪いんだけど、本当に行くの?」
「・・・もう決めた事だ、卒業式が終わったらすぐに発つつもりだ」
「・・・そっか」
「ああ」
―――手塚がいなくなる―――
その時やっと自分の中でそれを理解した
手塚を引き止める理由はない
だけど、何だか・・・
残された日々はあっという間に過ぎ去り
卒業式当日―――・・・
中等部での日々も今日で終わる
最後の制服さえ愛おしく思え、手にした卒業証書には「不二周助」・・・ボクの名前
あと1カ月もすれば、高等部での新しい生活が待っているのに
そんな事を考えたくもないのは・・・彼がいなくなるから
このまま時が止まってしまえばいいのに―――・・・
まだ少し肌寒い春の風が一斉に桜の花びらを散らす
「行くんだね・・・。」
「ああ。」
「・・・」
「・・・」
「・・・またね。」
「・・・ああ、またな。」
―――・・・ねぇ手塚
またね―――・・・また・・・
−Fin-
*あとがき*
不二さん達の学年が卒業したら、庭球って・・・
フジイナイ、オシタリイナイ、テヅカイナイ、etc・・・エッ( ̄д ̄)??
彼等は永遠の中学生で!!
でも高等部の不二さんも見たい・・・
(07.07.25)
photo by 空に咲く花